Surja Long Interview

Sankhu-work

 長南先生、まず最初に、Sankhuのジャガイモ生産を改善したいという関心と意欲を表明していただき、ありがとうございます。

Ⅰ Shankharapur農民グループについて

 今から10年前に、このグループを結成したアニタ・マナンダール博士、北海道大学の長南史男教授と研究グループのメンバー、そして地元では、もし私が新しく革新的な仕事を始めるなら、集団農業で種芋を生産するという集団的な決定に従って、私は、私の知性と良心、必要とされるすべての時間をかけ、モデル組織に投資し、導入することに成功しました。

 同時に、ネパールの中部地域で商業的農業を観察し、サクーでも商業的農業ができるかどうかを調べようとしましたが、意味も意義もありませんでした。

 もう1つは、考えや考え方が統一されていないことはできないことを学んだことです。グループの構成員の間で意見の相違が生じ、多くの不快な思いをしました。そのような時に、アニタ博士の存在は和らぎました。この仕事は非常に繊細で費用がかかります。

 グループで投資し、生産した種芋を販売できないことで、何年も嫌がらせ(リベート?)を受け続けたことは、お金に換算できない苦い経験でした。

 技術的な問題として、種子生産において品種を交雑させないようにすること、そして種子の世代を適切に分離することをしなければ、より多くの問題を引き起こすことは間違いありません。

 私たちのグループ内には、自分の考えやアイデアだけを言い張ったり、行動する人がいました。収入だけを見ている友人が増え、責任を取る人がいないため、私は諦めて全額の保証金を個人的に負担することになり、すべてを放棄して、全員にお金を返しました。これからは、成功するためには不快なことをしなければならないという結論に達しました。

 それだけでなく、農業に従事していた間、私は素晴らしい経験もしました。今、私たちが何かをしようと考えているなら、事前の準備と明確なビジョンを描くことによってのみ前進すべきです。最後に、ネパールでは州が農業生産に関する優れたプログラム(地域毎に特定品種を推奨?)を持っています。

 皆さんが来てくれると信じています。ありがとう

Ⅱ 私たちの抱える問題

1. 農家はPotatoesの品種特性を重視していない。

 農家は、品種を選択する際、危険分散、作りやすさから品種を選定しており、気象などの地域特性や市場動向を十分に考えていない。産地としてのブランド化を目標とする考え方も無い。

2. 化学肥料の使用は科学に従って行われていません。農家はほとんどが尿素(N)を使っているようです。

 N,P,Kの必要量について理解していない。そもそも尿素以外の肥料は高くて買えない。(9月21日のZoom会議でのスンダールさんの発言では、DAP, Potashはいまだ手に入らない)

 肥料の使用は、誰も指導していない。スンダール(小売業)が講習会を開催しているが?イベントに終わっている。

3. 農薬(毒物)を使用する場合、量や方法は考慮されていない。Potatoには殺菌剤、 抗生物質?や微量要素剤がよく使われます。 上記 3 つをすべて一度に使う農家もいます。

 農薬を混合希釈すると、相互に反応(中和による沈殿物生成・スプレヤーの目詰まり)する可能性があります。

 2016年のインタビュー調査時には、殺菌剤を「ビタミン剤」と答えた農家もいましたが、いまだに農薬の効果について正しい情報が伝わっていないようです。NPOは、適正な利用(適時、適量)を伝えたかったが、認識されていない。

4. 農薬を散布する際に、安全対策を講じる傾向はありません。

 NPOは、JICA草の根技術指導で農薬の適正な利用(適時、適量)方法を実践的に伝えようとしました。希釈の手順、散布作業機の扱い方、安全対策としてマスク、散布時の服装=素肌禁止、ゴム長靴着用、女性は散布作業に従事しないなどを奨励し、農業グループで実践しました。しかしながら、それは一時的な実践で、定着しませんでした。

 ちなみに、近年のCovid19感染対策時でも、ほとんどの人がマスクを着用しなかったそうです。Covid19は感染することによって感染者に抗体ができますが、農薬の影響は長期間にわたります。これまで、「Mancozebは女性ホルモンに影響しない」とする研究結果はありません。今後、農薬使用による健康への影響について研究成果を伝えることが重要です。

 タバコによる健康被害対策としてタバコのパッケージに「醜い肺がん」の写真を使った例がありますが、Mancozebは見えないところで起こっている可能性が高いのです。

5. 土壌改良のための堆肥の使用はほぼゼロです。

 鶏糞や化学肥料は土壌のpHに問題を引き起こすようです。

 Sankhuでは1990年代、稲わらと鶏糞で堆肥が生産され、Potato生産のために使用されていました。その圃場で堆肥が生産され、作物にとって重要な栄養要素を供給しました。たい肥の窒素成分が土壌で吸収しやすくなるためには、長い時間が必要です。肥料の効果としては遅効性がある、といいます。したがって、たい肥だけを使用すると、初期成育時には見劣りします。

 したがって、その圃場にあわせて配合します。

 1990年代末になって化学肥料の尿素が使われるようになりました。化学肥料には速効性があります。

 現在、農家は肥料を購入して、作物に必要な栄養素を購入しています。Chickin Compostと尿素が主な肥料です。増収を目的として、以前より多くのNitrogen成分を使っています。しかし、尿素を過剰に投入すると、「徒長」といって、葉茎ばかりが大きくなって、バレイショの大きさは小さくなり、収益は減少します。そして窒素過多の土壌はさまざまな問題を引き起こします。

 増収のためには、Nitrogenだけではなく、Phosphate, Kariumが必要です。作物生産にはN,P,Kの栄養素をバランスよく与えることが必要です。DAPとPotashを購入する必要があります。

 ChickincompostにはPhosphateが含まれていますが、栄養成分量は印刷されていますか?N,P,Kの栄養素をバランスよく使わないと、投入した肥料が無駄になります。生産量は減り、品質が低下し、農家の販売価格は下がります。

 2015年にサクーの精密な土壌分析をしたことがあります(土壌分析する民間機関はカトマンズにあります)。pH計、EC計、試験紙を使って簡易な分析をしましたが、特段の問題はありませんでした。土壌検査料は高価で、標準的な検査項目では、1サンプル5,000Rpsほどかかりました。

 作物の葉や収穫時のバレイショを観察すると、土壌の状態がわかります。成長過程で葉の色はどんな色でしょうか?枯れた茎葉はありませんか?できたバレイショにscab、かさびたがありますか? 

 昨年、サクーではバレイショ「そうか病」が問題になっていることを知りました。そうか病はpHを測り、pHが6.5~7.5になるように、石灰などを使って対策できます。石灰散布した後、次の作物を植えるためには最低2週間が必要です。稲刈りが終わって、すぐに夏バレイショを植える場合は、その時間がありません。休耕し、緑肥作物を植えます。一時的には減収しますが、土壌の劣化に対する有効な手段です。 

 昨年、scabが問題になっているLaxmmiさんの圃場で、pH 3.5という強酸性の結果が出ました。しばらく使ってないpH計を使用したので、結果に不安がありました。今回、新しいpH測定器でpHを測る予定です。検査は稲刈りが終わるのを待たなければなりません。

6. 種Potatoesの重要性は、注目されていません。

 冬と雨季にジャガイモの生産にどの品種を使用するかについての情報がありません。

 疫病に強い種子が必要であり、弱い品種と混植すべきではありません。Potatoesの病気に耐えられる品種と耐えられない品種があります。

 ネパールの品種は世界の研究機関と連携してテストが行われており、新しい品種は耐病性が改善されています。しかし、その品種が市場で売れるかどうかは別です。現在、ポカラでMS42-2が売れているのは、その地域にあっているためでしょうか?それとも、「おいしい」からでしょうか?確かめてください。なお、作物は連作を避けるのが基本です。また、病害菌のない種芋を使い、品種にあった栽培法を採用することが必要です。

 北海道のバレイショ品種の例で、「メイクイーン」「ダンシャク」は130年以上前の品種で、しかも「ダンシャク」は耐病性の低い品種です。しかし、ブランドとして定着し、現在も作り続けられています。品種の特性だけでなく、その地域の気象、土性などが重要です。とくに重要なのは農家の栽培技術の向上です。農家の努力があって適地適作が実現します。

7. 地方自治体はチャクラ(小集落)、そしてブロック(より広域の単位)で適地適産を推進すべきである。 それによって、バレイショ疫病リスクを減少させることができます。 

(注:2016年、当時、バグマチ県の農業省大臣に対するスリエさんのアドバイスです。” Prime Minister Agriculture Modernization”のプロジェクトは、各県で生産を強化すべき作物を定め、ネパールの農業を発展させようとする国のプロジェクトです。バグマチ県ではPotato生産を強化すべく、Bhaktapur にPotato zone office を設置しました。このオフィスはNARC(National Agricultural Research Center)に置かれています。)

https://pmamp.gov.np/en

【長南】

 北海道では、「大正メイクイーン」、「今金ダンシャク」などの地域ブランドがあります。地方にあった品種や栽培方法の改良によって、初めてブランド化ができます。

8. Potatoesの生産量を増やすには、健康で新しい世代の種Potatoesが必要です。

 種Potatoの情報、供給体制の状況として、試験場、検査機関、農家の連携が依然最悪であるように思えます。なにより、県レベルでの種Potatoの生産・検査体制の整備が必要です。また生産する農家への価格保証が必要です。日本の例が参考になるでしょう。

Ⅲ 私たちがしなければならないこと:

1. 農業という職業は商業化されるべきである。

【長南】

 作目選択を見れば、Sankhuはすでに商業化しています。乾季の小麦が夏バレイショ、冬バレイショに変わり、今はトマトが増えています。ちなみに、トマトの栽培技術は日本の「雨除け」といわれる栽培技術を採用しています。

 自給的農業が商業的農業に変化する際には、よくも悪くも、流通業者の役割が大きいのです。農家から買い入れるのは、集荷業者です。日本では、流通業者に農家の受け取り価格が買いたたかれないように、バーゲンニングパワーとして農業協同組合が農家から農産物を買い取ります。そして、市場の価格を安定させます。スリエさんの話していたPanautiの会社のように、契約栽培で農家が安定した価格を受け取る例もあります。いずれにしても、家が個々に売買するのではなく、集団的な交渉力の行使が必要です。

Sankhuでは、

1.誰がバレイショ、トマトを集荷していますか?いつも同じ集荷業者から買いますか?

2.農家は、カリマティ市場のバレイショ、トマトの価格、すなわち卸売価格を知っていますか?

 小規模の農家が、安定した収益を得るためには、「集荷」業者との間で価格交渉する力、バーゲニングパワーを持たなければなりません。個々の農家の力では、できません。

 日本の例では、東京に近い県の農業経営は、経営面積は小さくとも、高い収益力を持っています。市場に近く、輸送コストが低いからです。サクーも同じです。

 東京市場から遠い所にある北海道では、農協を通して、玉ねぎ、にんじん、大根などの重量野菜を、定時・定量を出荷します。そのため、北海道の農協は大きな定温貯蔵倉庫、輸送手段に投資しています。

2. 生産性を向上させるために、堆肥肥料とNPK の使用を奨励する必要があります。

 堆肥とは何か、何故栽培に有効なのかから整理する必要があります。肥料の投入による増収意欲はあっても、肥料を購入できない現状があります。Potatoは水稲栽培で湛水するため、土壌浄化(病害虫の死滅)効果はあるようです。

3. 生産されたPotatoesを一個所に集め、Sankhuブランドとして販売する必要がある。

【長南】

 どのように実現しますか?まずは、簡単な選別作業の場所を確保してはどうでしょうか?少なくとも品種毎に、大きさで分類するなど、簡単なことから始めてはどうでしょう。

 ブランドは市場において買い手が何を求めているかが重要です。差別化するための要素は、安全・安心が基本となりますが、それだけではブランドにはなりません。誰がどのような形で買うのか、マーケットを研究しましょう。

 ブランドを考えるのと同時に、私たちのグループの誰もが、Bajrayogini寺、Salinadi寺に来る人々が食べるポテトをイメージしました―昨年、家庭用油揚げ電化製品をプレゼントしましたね。100vへの電圧変換器を買って、今回試してください。今回、思いついたのは、Salinadi寺のそばのレストランで”サクーフライドポテト”のブランドで、お祭りのときに作って売ることです。お寺の参拝者は食べるでしょうか?

4. ここの農家には、格付けを行うべきかどうかの知識がありません。

【長南】

 格付けの目的は何でしょうか?現在の基準は、L,M,S,SSの大きさだけですが、それだけではブランド化には対処できません。パーツカルのバレイショは、よい例ですか?

5. 生産されたジャガイモは加工され、市場で需要される

 (例:ポテトチップス、フィンガーチップスなど可能性を秘めた製品づくり)協力モデルに持ち込むべき

 加工に対応するためには、貯蔵の必要性があります。加工場を通年の稼働させることが重要です。何よりも購入者がどのような加工食品を求めているかを調査しなければなりませんし、それは時代とともに変化します。協力モデルは良いアイデアですが、加工業者はより安い生産物を使いたがる傾向にあります。インドからの輸入の増加には注意が必要です。

6. 土壌を健康に保つことができないため、また「署名」されていない?ため、市場では良い値段がつきません。

【長南】

 土壌の健康の指標は何でしょうか。土壌の健康が保てないのは化学肥料の多用によるものでしょうか。そうか病は、土壌のpH管理で対処することが可能です。土壌には、以下の3つの機能があります。

土壌微生物の活発化

Activating soil microorganisms:suppressing the activity of harmful soil pathogens.

団粒構造の形成

Formation of Aggregate Structure:the formation of a crumb structure. an optimal environment for plant roots to take hold

土壌緩衝能の向上

Improvement of soil buffering capacity: the temperature, water retention property

7. コミュニケーションと公衆衛生を改善するため、必要に応じて国民の意識を高めるためのさまざまなプログラムを実施することが非常に重要です。

【長南】

 今回、私たちはWebサイトを使って、サクーの皆さんと私たちのコミュニケーションを図れるよう、頑張っています。スリエさんの言うように、最終的な目標がはっきりしない場合、よいプログラムを作ることはできません。

8. 生物農薬や有機肥料の使用の可能性を研究する必要がある。

【長南】

 生物農薬、有機肥料に何故着目するのですか?

 Sankhuはカトマンズという大消費地に立地しています。これからは畜産(特に酪農)が成長部門になります。そうすると、たい肥、有機肥料は、現在より多く、利用できるようになりますね。なお、現在、生物農薬は高価で、グリーンハウスで使用されています。

9. 必要があれば、プログラムを成功させるために技術者を雇います。

 最終的には、上記のプログラムを成功させるために農家を支援できる可能性があると考えています。

【長南】

 スリエさんが、経験をもとにアドバイスすることはよいことです。北海道の技術普及の技術者は、地域の優れた農家の技術を、誰もが使えるように改良し、その技術を普及します。すでにSankhuにいる優れた農家がいるならば、彼を地域の農業の先生にすべきです。いないならば、探す必要があります。Panautiの友人の会社では技術者を雇っていますか?

 以上、知識の普及・技術的な問題はステップ・バイ・ステップで解決できると思います。

 私たちは、今までスリエさんの指摘された課題をふまえて、一つの実現可能な提案をしました。サクーの農業の価値を高める一つの選択肢です。それは、ポテトの付加価値の向上を目指した、提案です。

 ポテトチップ、コロッケは、日本で成功しています。まず、小さなビジネスとして始めてはどうでしょうか?女性も参加のチャンスが広がります。食べて、おいしければ評判になります。YouTubeで宣伝してくれるでしょう。Bajrayogini寺のそばのレストランと協力して新しいメニューとして売り出してはどうでしょうか?

 私は、スリエさんの旧宅の庭で、食べてみたい。Ga-ichiもある、歴史を感ずることのできる空間です!クリシュナさんは、オーガニック農業をやっていますね?そうした友人と協力すれば、メニューも広がります。ヨーロッパでもオーガニックのお店は人気があるそうです。

 まず、ブランド化のために、品質の保証、原材料の明記、特徴の明示など、いくつか消費者に分かるように伝えます。この作業をすることで、バレイショ生産の課題が整理され、解決されるかもしれません。

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