2026Raji08

Raji Krow整備計画(案)

8. 計画策定・実施上の重要注意事項

8-1. 技術面

地震リスク対策

2015年ゴルカ地震でSankhu集落は甚大な被害を受け、現在も復興途上にある。用水路整備においても耐震設計を基本とし、石積み工法は地震力に対する安定性を確認した上で採用する。特に堰堤・取水工の耐震強度確認は必須である。

地質・土壌特性への対応

Sankhu平地部はカリマティ粘土の上に河成デルタ相が堆積した複合地盤であり、上流側は花崗岩由来の砂分が多い。シルト土壌が卓越する区間では漏水が多発しやすいため、ライニング工法の選定において土壌特性を十分に考慮する。全面コンクリートライニングは地下水涵養機能を損なうため、涵養ゾーンでは素掘りまたはレンガライニングとする。

モンスーン期の施工管理

ネパールの財政年度は7月始まりであるため、予算執行が遅れると雨季施工となりやすく、品質・工程管理が困難になる。工事計画は乾期(11月~4月)の施工を前提とし、政府・Municipalityの予算執行スケジュールと連動させる。

8-2. 社会・文化面

ネワール文化・宗教との調和

Sankhuはバジュラヨギニ寺・サリナディ寺等の宗教的に重要な場所であり、水路・貯水池は宗教行事(Madahav Narayan Melaの沐浴、月次の巡礼等)と深く結びついている。整備計画においては宗教行事の日程・聖水の管理方法を事前に確認し、工事が宗教的慣行を侵害しないよう配慮する。

土地所有・水利権の法的確認

ネパールの農地改革法により小作権は強く保護されており、土地所有の二重性(地主・小作)が水利組織の経営を複雑にしている。用水路敷地の権利関係はカトマンズ区の土地台帳と照合の上、法的に確認してから施工に着手する。

ジェンダー配慮

水汲み・洗濯・農業労働等、用水路に関わる業務は女性が大きな役割を担っている。管理委員会への女性代表の参加を確保するとともに、ガイチ(水場)の復活においては女性の利用実態を十分に把握した上で設計する。

8-3. プロセス面

日本モデルの押し付けを避ける

金沢・郡上八幡の事例はあくまでも「可能性の示唆」であり、Sankhu固有の解決策を住民自身が策定する過程が最も重要である。外部専門家(日本側)はファシリテーター・技術アドバイザーの役割に徹し、「提供する」ではなく「共に考える」スタンスを維持する。

行政担当者の人事異動リスクへの対応

ネパールの行政は人事異動が頻繁であり、担当者が変わると合意内容が引き継がれないリスクがある。合意内容・議事録・設計図は必ずネパール語の文書として作成・保管し、Municipality庁舎に正式に保存する。

計画文書の言語

整備計画書の正式版はネパール語で作成し、英語・日本語は参考資料とする。ネワール語については、ネワール語によるコミュニケーション資料の作成を検討する(ネワール語による出版が長年禁止されていた歴史的経緯に留意)。

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