Late Blight Disease of Potato

ポイント

  1. 病気の名称と発生時期
    • 病名は「ジャガイモの晩疫病(Late Blight Disease of Potato)」で、ネパールの各地域により発生時期が異なる。
      ・平野部(テライ)ではポプ月中旬頃から発生。
      ・中山帯ではチャイトラ月初め頃(ネパール暦で春)。
      ・高地帯ではジェプタ月初め頃(夏期)。
  2. 病気の原因と感染源
    • 原因菌は「Phytophthora infestans(フィトプトラ・インフェスタンス)」という病原菌である。
    • 病原菌は葉の表面に付着後、微細な穴から内部へ侵入し、葉の中で増殖する。
    • 感染した葉の裏側に白い綿状の菌糸が形成され、多数の胞子を生成し、風や雨水によって他の植物に伝播。
    • 感染したジャガイモの種芋や保存中のイモも感染源となりうる。
  3. 病気の症状
    • 葉に淡い茶色や濃い緑色の斑点が現れ、その周囲は黄色い輪として識別可能。やがて斑点は黒褐色に変化し、湿った濃い緑色のようになる。
    • 朝露時には葉の表面に綿毛状の白い菌糸が出現。
    • 病気は茎やイモの表面にも広がり、イモには大小の水浸状の斑点が現れ、さらに腐敗が進行。
    • 罹患したイモは保存中の腐敗リスクが高まる。
  4. 環境条件による蔓延の促進
    • 適度な温度(最高20℃、最低10℃)、湿度50~95%、日中の曇りや霧、水分の断続的な発生および夜間の多湿状態が感染を助長。
    • 軽い風や断続的な雨も菌の拡散に寄与する。
  5. 感染経路と拡散方法
    • 病原菌は葉の表面に付着し、そこから内部へ進入し、短期間(5~6日)で菌糸を増殖させる。
    • 生成された胞子が風や雨で他の健全な植物に感染し、畑全体に症状が広がる。
    • 病原菌はまた、土壌中や病気の種芋を介して越冬および翌シーズンに再度感染を引き起こす。
  6. 発病した場合の影響と被害
    • 適切な防除が行われなければ5~10日で作物全体が壊滅する恐れがある。
    • 保存中の芋の腐敗事故も増加し、収穫物の品質低下が発生。
  7. 予防策
    • 晩疫病に抵抗性のあるジャガイモ品種(例:कुमल रातो-२、खुमल सेतो-9、कुफ्रिなど)を使用する。
    • 感染のない健康な種芋のみを使用し、病気のある種芋や感染畑の種芋は避ける。
    • テライ地方では10月下旬~11月中旬頃までに植え付けを完了させることが推奨される。
    • 適切な株間をとることで空気の通りを確保し、湿度を下げる。
    • 芽かきや土寄せ作業を丁寧に行い、茎や種芋周囲の土壌不足を防ぐことで病原菌の侵入を減らす。
  8. 治療法
    • 病気の初期段階では灌水を控えるか最小限にし、湿度を下げる。
    • 抵抗性の低い品種にはメンコゼブを含む殺菌剤インドフィルM45を0.3%の濃度で7~10日間隔で散布する。
    • 症状が現れたらメタラクシル含有のシステミック殺菌剤レドミルやキノキシル、バキレックス、メトコなどを0.15%濃度で15~20日間隔で2~3回散布し、病気の進行を抑える。
  9. 管理上の注意点
    • ジャガイモ植え付け後は定期的に病気の早期発見に努める。特に高い株の下や水たまりができやすい場所など湿度が高いところを重点的にチェック。
    • 使用する殺菌剤は推奨の種類と適切な濃度で正しく散布する。
    • 葉の上だけでなく葉裏や茎部分まで均一に散布することが重要である。
    • 梅雨や多雨時期には10~15日間隔で複数回の散布が必要。延雨時は雨が止むのを待って再度散布する。
    • 種芋生産畑で病気が発生し、植え付け時に苗の25%以上が感染した場合は、感染株は早急に抜き取り、畑から持ち出す。
    • 収穫時には病気や損傷のあるイモを選別し、別にして処理する。
  10. 廃棄処理方法
    • 収穫後、病気が重度に罹患したイモや株、葉は畑の外に集めて土中に埋めることが推奨されている。
    • これにより残留菌の拡散防止と翌シーズンの感染抑制に繋がる。
  11. 連絡先情報
    • 詳細や技術支援は「ジャガイモ研究プログラム(アルワリ・アヌサンダン・カリャクラム)」、ネパール農業研究評議会(NARC)、クムラタル、ラリトプルに連絡可能。電話522114、525513。
    • 発行:国際ジャガイモセンター(インターナショナル・ポテト・センター)クムラタル。

主要結論

  1. ジャガイモ晩疫病はネパールの主要な作物病害の一つであり、適切な予防・管理がなければ急速に生産を損なうことが明確である。
  2. 病気の発生は気候条件に大きく左右され、湿度や温度管理、灌水のタイミングが蔓延防止の鍵となる。
  3. 抵抗性品種の利用と健康な種芋の選択が最も効果的な予防手段である。
  4. 感染が始まった場合、早期に適切な殺菌剤を使用し、定期的に繰り返して散布することで、病気の拡大を効果的に阻止可能。
  5. 畑の衛生管理と感染株の迅速な除去は、病害の拡大防止に極めて重要な役割を果たす。
  6. 収穫後および処理過程で感染イモや残渣を適切に処理することが、翌シーズンの発病リスクを低減する。
  7. 農家や技術者は定期的な監視と予防策の厳守に努める必要がある。

重要な詳細

  1. 病原菌の生物学的特性
    • 病原菌Phytophthora infestansは水分に依存する病原体で、湿気が多い環境を好む。
    • 菌糸は植物体に侵入し、胞子を形成、5~6日で増殖し他葉へ伝播。
    • 病原菌胞子は風雨により遠隔地へも拡散される。
  2. 地域別の発病時期に関して
    • 標高や地域の気候条件によって発病開始時期が異なり、地域別に防除計画を調整する必要がある。
  3. 症状の詳細
    • 初期の葉の斑点は葉表は淡褐色、周囲に黄色のリングを伴う。
    • 斑点は進行すると濃い褐色~黒色になり、しばしば水浸状になる。
    • 病原菌の白い綿状の菌糸は特に朝露の多い時間帯に顕著。
    • イモには外観に大小異なる斑点が現れ、内部の腐敗を引き起こす。
  4. 管理技術
    • 植え付け密度の調整や通風改善を図り、病原菌の蔓延しにくい環境を作る。
    • 灌水の管理が重要で、病気発生直後は灌水を停止または大幅に減らす。
  5. 薬剤散布の詳細
    • インドフィルM45(メンコゼブ含有)を0.3%溶液で7−10日間隔で防護的に散布する。
    • 疫病発生後はレドミルやその他システミック殺菌剤を0.15%溶液で15−20日間隔に2〜3回散布する。
    • 散布時は葉の上下両面、茎にも薬剤が十分にかかるよう注意。
    • 雨天時の散布は薬剤の流失を招くため、雨止みを待って再散布が必要。
  6. 感染株の処理法
    • 病気が広範囲に発生し、25%以上の感染がみられた場合は感染株を即時に抜き取り畑外に持ち出す。
    • 収穫時には腐敗や損傷が見える芋を選別し、別途処理。
    • 感染残渣は畑の土中に埋めて処理し、越冬する病原菌の活動を抑制。
  7. 教育と普及の重要性
    • 病気の特性、管理法、薬剤使用法について農家への定期的な教育が必要。
    • 技術的支援はネパール農業研究評議会や国際ジャガイモセンターを通じて受けることが可能。
  8. 言及される抵抗性品種例
    • कु्मल रातो-२(Khumal Rato-2)、खुमल सेतो-9(Khumal Seto-9)、कुफ्रि(Kufri)、राजिता(Rajita)等が推薦されている。
  9. 病気の発生条件となる気象因子
    • 最大20℃付近の温度、最低10℃近辺での温度条件下で発病しやすい。
    • 湿度が高い、特に50〜95%の相対湿度が蔓延に最適。
    • 断続的な雨や強い霧の存在。夜間の過度な露も感染促進要因。
  10. 病気による経済的損失の可能性
    • 適切な管理がなければ数日から十日程度で作物が全滅する危険があるため生産量の大幅な減少に直結。
    • 保存中のイモの損失も病気蔓延により増加し、農家の収入に影響。

以上のポイントを踏まえ、ジャガイモ晩疫病に対する包括的な理解と農業管理の実施が重要である。

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